心理学

嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 書評

効能

自分の人生を生きる勇気が、少しだけ貰えます

こんな人にオススメ

心理学とか哲学とか、人に関連する学問が好きな方

口撃力高めの碇シンジ

この本はオーストリア出身の精神科医、心理学者、社会理論家である アルフレッド・アドラーが残したアドラー心理学を分かりやすく紹介するものです。
アドラー心理学に深く精通している謎の先生、哲人。
触れるな危険!俺はこの世の全てに怒りを覚えている! という態度を崩さない、思春期の少年もビックリのワガママっぷりを発揮する、青年。
この本はそんな二人の対話形式でアドラー心理学の深淵に触れていきます。
もうね、何がすごいって、この青年の捻くれ具合ですよ! どこからそんなに捻くれた怒りが湧いてくんねん! というくらい、事あるごとに哲人に突っかかってきます。
例えるなら口撃力(口喧嘩)が高い碇シンジ、目につくものはララでも撃つ!アムロ・レイです。
その膨大すぎるネガティブエネルギーを違うことに使えたら。。。と思わずにはいられません。そんな超絶困ったちゃんの青年が、アドラー心理学に触れるにつれて、段々と前向きな気持ちを持ち始めます。
ただ、そんな簡単に落ちるタマではなく、私なんかは冒頭らへんで「ほぇー、なるほどなぁー、ためになるで、これはー」みたいに完落ちしたんですが、この青年は全然耐えます。
ヒットしすぎたメロドラマの展開のように、中々、恋に結びつくことはありません。
最初から惹かれ合ってるのは分かっているのに、無駄な抵抗やライバル、超えられないお家事情を引っ張り出してくるとか、巧妙に仕組まれた視聴率向上操作のように、私達の心を掴んで離しません。
そんな展開に皆さんはテレビではなくこの本に向かって叫ぶことでしょう 「いい加減、くっついちゃえよ!青年!」

心理学の3大巨頭、アドラー

心理学を好きな方は既にご存知だと思いますが、心理学の3大巨頭として、ユング、フロイト、そしてこのアドラーを指す場合が多いとのことです。
なかでもアドラーはユングとフロイトと異なる主張、アプローチをしており、人は変われる、今この瞬間からでも人は幸福になれる。
という変わった主張をします。
このあたりは、冒頭で説明されており、かなり力強く主張しきっています。

青年 最初に議論を整理しておきましょう。先生は「人は変われる」とおっしゃる。のみならず、誰しも幸福になることができる、と。
哲人 ええ、一人の例外なく。 

嫌われる勇気

「ズキュウウウン!!!」 言い切った!
「さすがアドラー!」 「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ!」
皆さんもご存知のトラウマ。これはフロイトが唱えた心理状態で、「外的内的要因による肉体的及び精神的な衝撃(外傷的出来事)を受けた事で、長い間それにとらわれてしまう状態で、また否定的な影響を持っていることを指す。」とのことです。
ただ、アドラーはこのトラウマに代表されるフロイトの原因決定論に疑問を投げかけます。

哲人 過去の原因ばかりに目を向け、原因だけで物事を説明しようとすると、話はおのずと「決定論」に行き着きます。 すなわち、我々の現在、そして未来は、全てが過去の出来事によって決定済みであり、動かしようのないものである、と。違いますか?
青年 では、過去など関係ないと?
哲人 ええ、それがアドラー心理学の立場です。 

嫌われる勇気

勇気が貰える言葉です。
人はすぐに「過去にこんなことがあってー」「どうせ僕なんかー」「今までがそうだったしー」という気持ちを持ちがちですが、そんなことはない、人はいつでもやり直せるぜ!という力強い言葉が読者に投げかけられます。
トラウマのように、原因決定論は聞いている人にとって、とても心地よい清涼剤になりえると思うんです。
上手く行かない人生と折り合いをつけるというか、悪く言えば言い訳に使いやすいと言いますか。
誰しも上手く行かない結果や人生の難しさを受け入れ難い時はあると思います。そんな時に、「君が今思い悩んでうまくいかないのは、赤ちゃんの時に哺乳瓶を取り上げられたからだよ。
それが原因で、君は物事に関して無気力になりやすくなってしまったんだ。トラウマだね。」と言われると、なんだか妙に安心しませんか?
やる気がないのも、上手く行かなかったのも、全ては過去に原因があるんだ!と納得してしまう人も多いと思います。
赤ちゃんくらいなら良いですが、もっとすごいと前世までたどり着いちゃいますからね(笑)
「前世の行いがー!」とか「業深き人生を送った過去があるー」とか。いや、言いたくなる気持ちは分かるんですけど、私なんかは「だからってどうしようもなくない!?」と思っちゃいます。
そう考えていた私にとって、本書はとても勇気が貰える内容となっていました。

嫌われる勇気 感想・レビュー

アドラー心理学の教えを、分かりやすく対面式で説明する本作は、心理学の面白さを学ぶ取っ掛かりにも良いのではないかと思います。
ただ、書いてあること全てを実践するのはとても難しいと思います。
例えばアドラー心理学では賞罰教育を否定しています。
悪いことをしたときは叱り、良いことをしたときは褒める。こういった教育姿勢を批判しています。なぜ批判しているのかは是非とも本書を手にとって確認してほしいんですが、私はこの教えを実践するのは難しいなーと思っちゃいました。
だって、私の娘ちゃん、めっちゃかわいいもん。
そして、この本とはまったく関係ないんですが、いまこの記事を書いている時に、外からうるさいバイク音が。大人しかった青年がまさかの反抗!?
きっと彼は前世でとんでもないワルだったに違いありません。