世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?の画像。混乱を極めるビジネス界において、これまで効率的とされてきた手法が通用しなくなってきている。本誌はビジネスとアートとの相関関係を明らかにし、新時代のビジネスモデル構築を指南する。
ビジネス

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 書評

効能

アートとサイエンスを融合させます

こんな人にオススメ

新時代の経営スタイルに興味がある方

承認欲求と自己実現の追求

みなさん、Instagramはやっていますか?
私は見るだけですが、非常にキレイな写真や動画がほぼ無限大に展開されており、なんだか心が落ち着かなくなってきます。
やはりtwitterのようなおっぴろげ〜な感じがないと、落ち着かないですよね。
え?私だけですか?
みなさん、無理されていないですか?
私なんかはtwitterやこのブログで好き勝手に思いを綴っているので、何のストレスもなく日々を過ごしていますが、他のSNSってどうなんですか?
みんな、承認欲求を満たすことに疲れていないんでしょうか。
が、この「疲れる」という感覚自体が、もしかして私が既に旧ザクになっていることの証明なのかもしれませんね。。。
先日、一回りも年の離れた後輩と話していたんですが、彼らの特性と言いますか、感性を知ることができたんです。
後輩との楽しい楽しい会話の中で、軽いタッチで「働くのしんどくな〜い?何がモチベーションなの?」と聞いてみたんです。

「いや、お金っすよ!」 「車欲しいんで!」 「遊びまくりたいんです!」というギラギラとした答えが返ってくると予想していたんですが、見事に裏切られました。

彼曰く、「褒められた時が一番うれしいっすね〜」

えええええええええええ〜〜〜!!!!!

褒められるだけでいいの!!??

お金は!? 車は!? モテたくないの!?

イケメン「それよりも自分らしくある方がカッコよくないですか?」

私「は?全然意味分かんない」

という、ジェネレーションギャップどころではなく、生まれた国が違うんじゃないかぐらいの温度差がありましたね。とりあえず、彼のことは事あるごとに褒め倒すことにしました。
そして、今の若者の感性についても、本書は見事に言い当てています。

ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ウィリアム・フォーゲルは「世界中に広まった豊かさは、全人口の本の一握りの人たちのものであった「自己実現の追求」を、ほとんどの全ての人に広げることを可能にした」と指摘しています。
人類史においてはじめてと言っていい「全地球規模での経済成長」が進展しつつあるいま、世界は巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつあります。
このような市場で戦うためには、精密なマーケティングスキルを用いて論理的に機能的優位性や価格競争を形成する能力よりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が需要になります。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

なるほど。わかりやすい機能や性能、スペックなんかには目もくれないということですかね。
確かに、よくよく考えてみると、どんだけ良い車も制限速度は守らなければいけないし、どれだけ高い時計でも、指し示す時刻に違いはないですからね。
見た目もギラギラ脂ぎってて、今の若者にはダサいデザインと映っているのかもしれません。
そんなことよりも、画面の向こう側にいる何百、何千の人間からのイイね!の方が彼らには魅力的に映るのかもしれないですね。
ただ、その一方で、彼らが憧れてやまないブランドも存在するんです。
そう、齧りかけの林檎マークの、あれです。

なぜ我々はAppleに心惹かれてしまうのか

Appleだけが持っている、他の製品にない強みとはなんでしょうか?
カメラの性能? CPU数? 処理速度? デザイン?
いえ、Apple製品を持つことのストーリーこそが、彼らの最大の強みとなっているのです。
中国産、韓国産のアンドロイド端末の進化は激しく、携帯端末にもかかわらず、4Core以上のCPUを搭載したり、8GBに近いメモリを積んでいたり、はたまた目も覚めるような高画質のカメラも搭載しています。
しかし、これらの機能、性能、スペックをもってしても、Appleが持つ強烈なストーリーには打ち勝つことができないのです。
本書でもAppleの持つ強力なブランディングについて触れています。

イノベーションの後に発生する「パクリ合戦」における、デザインとテクノロジーの陳腐化という問題を見落としていることが多い。
一方で、ストーリや世界観はコピーできません。ストーリーや世界観というのは、その奇病の美意識がもろに反映するわけですから、これはサイエンスではどうしようもない。そして繰り返せば、アップルの本質的な強みはテクノロジーでもデザインでもなく、アップルという抽象的なイメージに付随する世界観とストーリーなのだということです。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

そう、CPUやメモリ、カメラなどの高性能機器はいずれ大量生産され、他社との差別化が困難になってくるのです。
より良い性能のものを、より安く提供するものの一強になってしまいます。
そして、その激しい価格競争、生存競争を経た後では、勝者もまた無傷ではいられないのです。
つまり、苦労に見合った対価を受け取ることが著しく困難になるのです。
こんな、消耗戦ともいえる戦いはビジネスの世界では繰り返し繰り返し行われきており、その競争に限界が見えてきたと感じる方も多いと思います。
そして、「サイエンス」を発達させた今までのビジネスは限界を迎え、これからは「アート」の観点から製品、サービスが提供されるべき、というのが本書のメインテーマとなっています。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 感想・レビュー

アートとサイエンス、アートとビジネス。
一見、水と油のように混ざり合うことのない関係に思える両者について、多くの共通点を見出し、これからのビジネスモデルを語る本書は、次世代のリーダーを目指す方にはピッタリの内容となっているのではないでしょうか。
そして、本書においては、巨額の脱税、横領、不正会計が蔓延する昨今のビジネス界にこそ、アート、美意識が必要であると説いています。

現在のように変化の早い世界においては、ルールの整備はシステムの変化に引きずられる形で、後追いでなされることになります。そのような世界において、クオリティの高いに意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められることになります。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

そう、ルールの整備が追いつかないビジネス界こそ、明確になっている既存の法律やルールだけでなく、「これをやったらカッコ悪いな」という美意識が必要なのです。
書いてて思ったんですが、私の後輩、本書の内容ともかぶる物凄くカッコいいこと言ってますね。
カッコいい生き方に憧れる美意識の高い方こそ、本書を手にとってみてください。
本書を読んでくれれば必ず私が褒めますので。